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東日本大震災では強く長い揺れによって多くの建物が被害に遭いました。天井が崩落した事例では、天井内の吊り機器を支える吊りボルトが破断して機器が落下したことが原因のひとつとなっていました。天井スラブからファンコイルなどの小型空調機器を吊る場合、通常は吊り用全ねじボルト4 本で機器を固定し、さらにX状に斜材を設けて、がっちりと機器を固定することで耐震補強しています(X状据付法)。この補強をしないと大地震などの大きな揺れや共震が生じた場合、吊りボルトの一番弱い部分に応力が集中して破断してしまう懸念があります。この補強工事は狭い天井裏での作業となり、斜材の採寸や切断に手間がかかることから、作業の簡素化、作業時間の短縮が求められていました。
新しく開発した「柔ワイヤ工法R」は、専用のワイヤと取付金具を使い、これまでのように吊りボルトの剛性を高める方法ではなく、ワイヤが可動するように取り付ける補強方法です。吊り機器が揺れた時の可動量をワイヤと金具の摩擦力で制御することで吊り機器自体の揺れを減衰(制震・制振)させます。専用金具にワイヤを通すだけなので斜材の採寸と切断のための時間が不要で、取り付けもワイヤを金具に通していくだけなので、ボルトナットの締め付け数が減り、大幅な作業時間の短縮を実現します。また、作業時のゴミは余剰ワイヤのみなので、大幅な省資源化が可能です。
X状据付法には特定の周波数によって揺れが増大する「共振点」が存在します。共振は吊りボルトが破断したり、激しい揺れで吊り機器自体がダメージを受ける大きな要因となります。「柔ワイヤ工法R」には突出した共振点が見られません。共振による大きな力が作用しないため、吊りボルトの剛性の一番弱い部分への応力の集中が避けられます。吊りボルトの破断を抑制し、吊り機器の損傷や落下リスクを軽減できます。
改修工事の現場でX状据付法と柔ワイヤ工法を同一作業員(2名)に実施させて作業時間を計測した結果、柔ワイヤ工法ではX状据付法の3 分の1 の時間で施工できることが実証されました。これまで耐震対策が施されていない既存設備や従来では施工の難しい箇所、仮設の設備へも簡単に短時間で設置が可能となり、より多くのお客様へ暮らしの安心と安全を提供できます。